乳腺炎には主に「急性うっ滞性乳腺炎」「急性化膿性乳腺炎」「慢性乳腺炎」の3種類があります。
急性うっ滞性乳腺炎
特に、初産婦に発症しやすく、出産後1週間以内に多くみられます。
乳汁が乳房にうっ滞し、炎症を起こします。
母乳の通り道である乳管が十分に開いていない、赤ちゃんが母乳を吸う力がまだ弱く十分に乳汁を吸い切れない、などの理由で乳汁が溜まってしまいます。
症状としては、乳房全体の腫れや赤味、痛み、熱感、しこりなどがあります。
対応としては、乳房マッサージ、搾乳、それでも症状が緩和しなければ乳房を冷やすなどの方法があります。
生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳を吸う力もまだ弱く、わずかな量しか吸うことができないため、乳房に母乳が残ってしまいがちです。残った母乳は全部出し切るまで搾乳し、必要であれば冷凍しておきましょう。
漢方的には、このタイプの乳腺炎の原因の一つとして、「肝鬱気滞」と呼ばれる体質の偏りが考えられます。
出産と育児の緊張感から「肝」の疏泄作用が失調し、気・血が滞りやすくなった状態です。
加味逍遙散、逍遙顆粒、柴胡疏肝湯、開気丸など、気の巡りを改善する漢方薬が候補になります。
香りのいいお茶やアロマなども気持ちをリラックスさせ、気の巡りを改善するのに役立ちます。
この他に「胃熱壅滞」と呼ばれる体質も原因として考えられる場合もあります。
高カロリーで消化の良くない食品の摂りすぎ、あるいは胃の消化力の低下から消化不良を起こして、胃に熱がこもり、この熱が経絡を通して乳房に伝わり、乳汁がうっ滞しやすくなります。
一昔前までは、産後は栄養のあるものを摂るように言われていましたが、栄養過多になりがちな現代では、むしろ消化に負担のかからないさっぱりした食べ物が、乳汁をサラサラにし、乳汁のうっ滞を防ぐことができます。
このタイプには胃熱をとる漢方薬や消化を助ける漢方薬や健康食品を使います。
急性化膿性乳腺炎
菌感染により乳腺が炎症を起こすことで発症します。
急性うっ滞性乳腺炎が悪化して化膿性乳腺炎を引き起こすこともあれば、赤ちゃんに乳房を噛まれた傷口から感染を引き起こすこともあります。
症状は、急性うっ滞性乳腺炎の症状に加え、高熱や悪寒、全身の震えなどを伴います。
西洋医学的な治療方法としては、授乳をやめて、抗生物質や解熱剤を使い、場合によっては、患部を切開することになります。
漢方では、金銀花、淡豆豉、連翹、牛蒡子、桔梗、野菊花、蒲公英、紫花地丁、龍葵など、熱や炎症を取り去る生薬を含んだ漢方薬や健康食品を用います。
症状が酷くなく、授乳をやめたくない場合は、漢方を試してみるのも選択肢の一つです。
また、気虚(エネルギー不足)の状態になっていると免疫力が低下し、細菌感染しやすくなりますので、気を補う漢方薬(補気剤)を併用することで、症状の悪化や予防につながります。
慢性乳腺炎
発症に授乳は関係ありません。
乳輪の下にしこりができ、乳輪や乳輪近くの皮膚から膿が出ます。
乳管と皮膚の間に瘻孔(ろうこう)と呼ばれる穴ができていると、発症を繰り返すことがあります。
西洋医学的な治療方法は、急性化膿性乳腺炎と同様に、抗生物質を使ったり、患部(乳腺や瘻孔)を切除したりします。
漢方的には、急性化膿性乳腺炎と同様、熱や炎症を取り去る漢方薬や健康食品を使います。
また、このタイプは、もともと気・血・水の巡りが悪い方が多く、再発予防のために、冠元顆粒、血府逐瘀丸、桂枝茯苓丸、芎帰調血飲第一加減など、気・血・水の巡りを改善する漢方薬を、体質に合わせてお薦めします。
つらい体の不調やお悩みは一人で悩まず、まずはお気軽に泰山堂へご相談ください。