漢方草庵 泰山堂
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卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は小さいうちは、ほとんど自覚症状がありませんが、大きくなってくると、周囲を圧迫し、頻尿・腰痛・下腹部痛・月経痛などの症状が現れます。
また、卵管に癒着したり腹水を起こしたりすることもあります。
嚢腫の茎部がねじれる「茎捻転」を起こすと、激しい痛みを生じ、卵巣が壊死してしまう危険性も出てきます。

卵巣嚢腫の種類

卵巣嚢腫は、嚢腫の中に何が溜まっているかによって、大きく3つに分類されます。

漿液性嚢腫:内部にサラサラとした水のような液体が溜まっている嚢腫で、もっとも多いタイプです。

粘液性嚢腫:内部にネバネバした液体が溜まっている嚢腫です。他の2種類と比べ、大きくなりやすく、悪性腫瘍との鑑別が難しい場合があります。

皮様嚢腫:内部に皮脂、毛髪、歯、骨などを含んだ嚢腫で、比較的若い女性に多く見られます。

西洋医学的検査と治療

卵巣嚢腫は、内診・触診や、超音波検査などで診断されます。
詳しく調べるにはCTスキャンやMRIなどによる検査を行います。
それでも悪性かどうかの判断が難しい場合は、採血により腫瘍マーカーを調べます。

治療は大きさや悪性化の可能性などによって異なりますが、一般的には目安として5㎝くらいを基準としているところが多いようです。
5cm程度までは経過観察とする場合が多く、それ以上になると、手術が検討されます。

手術の場合、嚢腫部分のみを摘出し正常な組織を残す「卵巣嚢腫摘出手術」と、卵巣(及び卵管)全体を摘出する卵巣摘出手術があります。

漢方的な考え方と治療方法

漢方的には、卵巣嚢腫は瘀血(血の滞り)水湿(水の滞り)が絡んだ病態と考えます。

瘀血の傾向が強い場合

血流が良くない状態で、生理の血に塊があったり、生理痛の酷い方に多く見られます。
頭痛・肩こりなども瘀血体質の特徴の一つです。
この場合、川芎、紅花、牡丹皮、丹参などの生薬を含む漢方薬が候補になります。

水湿の傾向が強い場合

水の巡りが悪い状態で、むくみやすい・重だるい・下痢や嘔吐しやすいなどの傾向があります。
卵巣嚢腫が急に大きくなった場合は、水湿が強く関わっていると考えられます。
この場合、茯苓、沢瀉、薏苡仁などを含む生薬が候補になります。

また、瘀血や水湿の背景には気虚・気滞・血虚などが隠れていることが少なくありません。

気虚・気滞

「気」とはエネルギーのようなもので、血や津液(体に必要な水分)を巡らせる力を持っています。
気が不足していたり(気虚)、気の巡りが悪かったり(気滞)すると、血や津液も滞ってしまいます。
疲れやすい、朝起きるのが辛い、食欲がない・・・などの傾向がある場合、気虚の可能性があり、人参・黄耆・白朮などを含む漢方薬を検討します。

一方、生理前にイライラしたり胸が張ったりしやすい・気分のアップダウンが激しい・ストレスをうまく発散できない・・・などの傾向がある場合は気滞体質の可能性があり、柴胡・香附子・半夏・厚朴・枳実などを含む漢方薬を検討します。

血虚

血が足りていない状態で、西洋医学的な貧血とは少し意味が異なります。

生理の量が少ない、爪が割れやすい、疲れやすい、冷え症・・・などの症状が見られます。この場合、当帰・地黄・芍薬(白芍)などを含む漢方薬が候補になります。

なお、子宮筋腫や子宮内膜症と同様、卵巣嚢腫には冷え症の方が多いように思います。
漢方薬だけでなく、日ごろから、温かい物を飲食すること、薄着にならないようにすること、適度な運動を心がけ血流をよくすることなどをお薦めします。

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