上咽頭とは鼻腔の後ろに位置していて、鼻の穴からも口からも、のぞいても見ることができず、内視鏡などを入れて、やっと見れる位置にあります。
左右の鼻腔から吸い込んだ空気は、上咽頭で合流して、ここから気管に向かって空気が(下の方へ)方向転換します。
方向転換の場所なので、吸い込んだ空気のスピードが急速に落ちて、空気が停滞しやすい場所になっています。
吸い込んだ空気には、ほこりや細菌、ウイルスなどが含まれているので、空気の停滞により、上咽頭では、こういったウイルスなどが付着しやすく、そこから感染→炎症が引き起こされます
ちなみに、新型コロナウイルスに感染しているかどうかを検査する際に、鼻に綿棒を入れて調べますが、これは上咽頭部分に付着しているウイルスを採取しています。
また、上咽頭が炎症を起こしやすい理由として、これ以外にも喫煙、乾燥、胃酸などもあります。
逆流性食道炎などを患っていると、胃酸が喉まで逆流し、上咽頭まで及ぶことがあります。
上咽頭は、胃の内部と異なり、胃酸に耐えられるような構造にはなっていないので、少量の胃酸でも炎症を起こしてしまいます。
このように炎症を起こしやすい場所なので、急性の上咽頭炎はとても多い病気で、西洋医学では抗生剤などで対応します。
ところが、この炎症をしっかり治さないで放っておくと炎症が慢性化してしまうのが、上咽頭炎のやっかいなところと言えます。
そして慢性化した上咽頭炎が全身の症状につながっていくことが問題なのです。
全身の症状
慢性上咽頭炎が、咽頭以外の場所に症状が広がっていくのには、主に3つのパターンがあります
(1)炎症の放散
上咽頭炎の炎症が放散されて、近くの部位に痛みが広がり、首や頭、肩など、上咽頭に近い部位に痛みが出ます。
(2)自律神経の乱れ
上咽頭の炎症と自律神経の乱れのメカニズムについては詳しいことはまだわかっていないようですが、上咽頭には、脳の迷走神経の末端など、多くの神経線維が存在することと関係しているようです。
これらの神経が、上咽頭の炎症による影響を受け、自律神経のバランスが乱れてしまいます。
具体的には、めまい、吐き気、倦怠感、鬱など、実に様々です
(3)二次疾患
先にも書きましたように、上咽頭は細菌やウィルスなどが付着しやすいため、免疫細胞が多数存在します。
上咽頭で炎症が発生すると、炎症物質(サイトカイン)が血流にのって全身をめぐり、上咽頭とは離れたところにある腎臓や皮膚、手足の関節などで炎症症状が出てしまいます。
このように、喉とはまったく関係がなさそうな場所で様々な不調が発生しますので、原因不明の不調がある場合、
「最近、喉の炎症を伴うような風邪や感染症に罹らなかったか」
を疑ってみるのも大切です。
慢性上咽頭炎と漢方
まず、上咽頭炎は、慢性化する前に急性期に炎症をしっかり止めることが大切です。
漢方薬だと、涼解楽、五涼華、五涼華は、五味消毒飲と呼ばれる処方をベースにした健康食品です。五味消毒飲は読んで字のごとく消毒作用にすぐれていて、菌による感染、炎症に使われます。
5種類の成分はすべて花(スイカズラ、タンポポ、シマカンギク、ノジスミレ、イヌホウズキ)で、炎症による熱を冷ます作用があります。
抗生剤は長期間使用することに抵抗のあるかたも多いと思いますが、これらの漢方薬は比較的長期間使用することも可能です。
また、かなり慢性化してしまった場合には、これらに、柴胡や黄芩、黄柏、黄連を加えた処方などを用いたりします。
また、免疫力を上げることが大切ですので、麦味参顆粒や衛益顆粒など黄耆や人参を配合した漢方薬を追加で使用すると効果的です。
つらい体の不調やお悩みは一人で悩まず、まずはお気軽に泰山堂へご相談ください。