腎臓は毎日約200リットルの血液をろ過して、血液に含まれる老廃物を尿として体外に排泄することで、体内を浄化してくれています。
また、体内の水分量や電解質バランスを調整し、血圧を調整したり、血液を作るホルモンを分泌したり、骨を健康に保ったりするなど、体にとって重要な役割を担っています。
慢性腎臓病とは、何らかの腎障害や腎機能の低下が3か月以上持続する状態を指します。
慢性腎臓病は、よほど重症にならない限り、自覚症状がなく、検査で初めて気づくことが多い病気です。
加齢とともに腎機能は低下していきますが、慢性腎臓病は高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などとも関係があります。
慢性腎臓病の患者数は増加傾向にあり、成人の約8人に一人が該当すると言われています。
病気が進むと以下のような症状がみられます
夜間の頻尿
疲労感・倦怠感
手足のむくみ
貧血
息切れ
しかし、このような症状が出るのはかなり進行した状態であることが多く、症状がなくても、検査で腎機能の低下が考えられる場合は、早めの対応をおすすめします。
西洋医学的な治療方法としては、原因となっている疾患の治療を目的とした薬物療法があります。
たとえば、高血圧や高コレステロール、糖尿病などがある場合は、それらを改善する薬が、またむくみや貧血などがあれば、利尿剤や貧血を改善する薬が使われます。
また、症状がかなり悪化すると透析や移植などの対応がとられます。
このように、腎機能そのものを改善する決定的な治療方法はないのがないのが現状のようです。
慢性腎臓病と漢方
漢方では、瘀血や痰湿(または湿熱)、脾虚といった体質が慢性腎臓病と関わっていると考え、これらを改善する対応を取ります。
瘀血
瘀血とは、血流が悪くなった状態です。
腎臓にはたくさんの血管が集まっています。
特に糸球体は毛細血管の塊と言ってよいほど、たくさんの毛細血管が集中しています。
瘀血の状態だと、これらの毛細血管の血流が悪くなり、腎臓へのダメージにつながります。
瘀血体質を改善することで、糸球体の毛細血管の血流を良くし、腎機能の改善や悪化の抑制が期待できます。
痰湿/湿熱
慢性腎臓病の原因となっている糖尿病や脂質異常症などは、血液に不要な老廃物が停滞している状態で、漢方では「痰湿」と呼ばれる状態に該当します。
痰湿は長期化すると「熱」を伴う湿熱となります。
痰湿も湿熱も炎症を引き起こす要因となり、腎臓にダメージを与えます。
脾虚
脾は消化吸収に関係しています。
この他、脾には体に必要なものが外に漏れないようにする働きがあり、脾の力が弱くなると尿たんぱくやけ血尿が出やすくなります。
また、脾の機能が低下すると、痰湿を生みやすくなります。
慢性腎臓病に使われる生薬
黄耆
衛益顆粒や防己黄耆湯などに含まれる黄耆には、腎機能を改善する効果があることがわかっています。
衛益顆粒には、黄耆が多く含まれており、黄耆以外にも、胃腸の働きを助け、体内の不要な水分の排泄を助ける働きがある白朮も含まれています。
丹参
冠元顆粒などに含まれる丹参には、毛細血管の血流を改善するだけでなく、ダメージを受けた毛細血管の内皮細胞を修復する作用があります。
また、丹参には、GFRを増加させる一酸化窒素を増やし、クレアチニンが分解されてできるメチルグアニジンという物質の数値を下げる作用があることも、わかっています。
その他
田七人参やチャガ(シベリア霊芝)などの健康食品も、血流や痰湿を改善する漢方薬と併用すると、効果的な場合があります。
また、腎臓の機能は加齢とともに低下します。腎臓のろ過機能と関係が深いネフロン(※)の数は、年齢とともに減っていきます。
80歳の人のネフロンの数は、40歳の人のそれと比べると約40%減少していると言われています。
※ネフロン:糸球体(血液をろ過する役割)と尿細管(必要なものと不必要なものをふるい分ける細長い管)を一組にした単位
加齢による腎機能の低下を抑制するには、補腎薬と呼ばれる漢方薬が役立ちます。
尚、補腎薬は、消化に負荷のかかる生薬が使われていることが多く、脾が弱い人は、補腎薬を服用しても消化吸収されず、折角の補腎薬の効果が出ないばかりか、脾にダメージを与えて、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。
このような場合は、健胃顆粒、健脾散、晶三仙など、脾の働きを助ける漢方薬や健康食品を併用することがあります。
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